【Vol.6】
中国iPad商標問題(2)

iPad訴訟 和解で決着


昨年末からテレビ・新聞で大きく報道されておりました中国における「iPad訴訟」は、アップル側が唯冠科技へ6000万ドル(約48億円)を支払うことで和解しました。

アップル側としては、一定の金額による和解に応じることで、販売の停止していた新型iPadを中国国内で流通させることができる。また、訴訟で敗訴が確定した場合、損賠賠償額は最大で16億ドル(約1280億円)になると推測されていました。
更に、iPadを含むアップル製品は、鴻海精密工業(台湾に本社を持つ世界最大のEMS企業、SHARPの提携先として話題)が中国大陸で生産しています。そのため、敗訴の場合、中国大陸でのiPadの製造自体も危うい状況にありました。
一方、唯冠科技は、台湾の保険会社から破産を申し立てられるなど、今年3月ので時点では、事実上倒産状態と言われており、債権者は、アップルから支払われる賠償金をその不良債権の回収手段と考えていました。

また、中国政府としても、アップル側が中国でのiPad生産の撤退を決定した場合、100万人といわれる中国人労働者の雇用や地方経済に大きな影響を与えることを見逃すことはできません。
更に、近年、中国の人件費が高騰し、中国に生産拠点をもつ旨みが減少しているにも関わらず、知的財産権によるトラブルが発生する危険性のある中国から生産拠点を撤退又は事業縮小しようとする諸外国企業の動きを加速させる危険性も包含することになります。

そのような状況下、両者にとっては、『妥当な金額による金銭賠償による和解』が最も現実的な解決策であったと判断し、唯冠科技は、6000万ドルという金額で和解に応じました。

外国出願の必要性(そもそもなぜ外国に出願するのか)


商標法も他の一般法と同様に、法律による効果はその国毎に独立しており(属地主義と言います)、自国で商標権を取得しても、その権利を他国で主張することはできません。

国際的に法律は属地主義を原則としている状況と、更に、中国をはじめ世界の殆どの国において先願主義を採用しているという状況とを鑑みると、やはり外国においてビジネス拡大を狙う場合には、進出する国が決まり次第、より好ましくは日本国出願と合わせて商標登録出願を行うことが必要と言わざるを得ません。
特に、他国で成功したブランドやビジネスモデルをアジア地域において先取り的に取得し、該当企業が自国に進出する場合には高額な買い取りを要求する等の事案が頻発しているのが現状です。

このような冒認出願は、決してビジネスと言えるものではありませんが、「法律的な原則」や「感情的な思い」により排除できるものではありません。「郷に入っては郷に従え」との言葉にもあるように、進出する各国の状況に合わせてその国の法律・ルールに則って、つまり、その国の法律・ルールをうまく使ってビジネスを拡大することが必要です。



掲載日:2012.07.09
作成者:西川
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